四季折々の気候から生れた日本人独特の感性は、雨を楽しむ事により、
雨の日の憂鬱な気持ちを克服してきました。
英語では雨はrain、霧雨はdrizzle、土砂降りはhard rain、嵐はstorm、せいぜいこの程度の違いでしょう。
ところが、日本語では青時雨(あおしぐれ)、青梅雨(あおつゆ)、青葉雨(あおばあめ)、秋微雨(あきこさめ)、
秋さづい(あきさづい)、秋時雨(あきしぐれ)、秋湿り(あきじめり)、秋驟雨(あきしゅうう).......
とにかく数え切れないほどあり、一つづつ微妙に意味合いが違います。
前世人たちは雨を楽しんできたと言う事が分かります。
現代人には、こういった日本人特有の繊細な感性が、失われがちではないでしょうか。
「癒し、ゆとり、ほのぼの、リラクゼーション」と言ったネーミングを目にする事が多くなってきたのも、 現代人に失われかけた何かを呼び戻そうと、心の中で反応しているようにも思われます。
このコーナーでは、四季折々の雨の呼び名をご紹介して行きたいと思います。
挽秋初冬のころ、晴れた空が急に雨が降り出し、間もなく晴れ、やがてまた曇って降り出すと言うように定めなく時々降ってくる雨。京都盆地北部のような日本海側に近い山間部では、その「雲の行列」一つ一つの雲が通過するたびに、 1~2時間の周期で降ったりやんだりを繰り返す。
晩秋から冬にかけて突然、少時間降る急雨。多くは朝と夕方に降り、それぞれ「朝時雨」「夕時雨」と呼ぶ。
磯や渚に降る時雨。波打ち際に降りかかる時雨には陸のものとは違う情感が感じられます。
片方の空からは時雨が降り、他方では日がさしたような空模様。
北のほうから降り出してくる時雨。北風に乗って降ってくる時雨。
京都の北山から降ってくる時雨。大きな雨粒が、霰のようにパラパラ音を立てて降るのが京都の時雨の特徴。
山茶花が咲く頃に降る時雨。冬の暗鬱な空の下で山茶花の赤い花に降りかかる時雨は艶に感じられます。
その冬はじめての時雨。「初霽」とも言う。
時々降りすぎていく雨。村雨の要素を持っている。
山むこうで雨を降らせた雲が、こちら側に来てもしぐれること。
山に降る時雨。冬支度を終えた山が時雨れる。
夕方降ってくる時雨。
雪まじりになって降る時雨。霙とよく似ているが、降ったりやんだりする様から時雨とされる。
横なぐりに強く降っている時雨
強風をともなった時雨。
初冬、初春にみられる、雪が降る途中で暖気の為溶けかけて、雨まじりに降るもの。
「雨氷」「三曽礼」と書いて(みぞれ)とも言う。
寒にはいってから九日目に降る雨。豊年のきざしと言う。この日に汲み取った水は、薬として特効がある。
雨、風などに雪が雑じって降ること。雪雑(ゆきまぜ)とも言う。
涙ほどの少量降る雨。深い悲しみの涙が降るように感じられる雨。後者に「梅若の雨」「曽我の雨」等がある。葬式の時に降る雨を言う事もある。
【参考文献】
「広辞苑」(岩波書店)
「広辞林」(三省堂)
「日本大歳時記」(講談社)